たくさん嘘をつくこと

 三月も半ばに入ったが、春は未だどこかで足踏みしていて、私たちのところへ訪れてはくれないようだ。
 稽古場では6月公演「浅草物語」の本読み稽古が行われている。
 これは芝居の話しではないが、例えば、学校をずる休みする時に、「おなかが痛い」という小さな嘘をついたことがある人は少なくないだろう。そして、その小さな嘘を相手に信じさせるために、「さっき食べた卵がちょっと古かったかも…」などと、もう一つ嘘を重ねたりしたこともあるのではないか。不思議なことに、「卵が古かった」という裏付けとなる嘘を付け加えることで、「おなかが痛い」ことに真実味が生まれる。多くの人が、何らかの形で、似たようなことを経験しているのではないだろうか。
 ところで、芝居は虚構であり、その世界を構築しているのは、台本に書かれたものがたりだけではなく、役者たちが作り上げた様々な嘘だ。しかしその嘘は、ものがたりの中から生まれた想像力の産物であり、観客を心地よく騙す上質の嘘である。それが芝居に大きなリアリティを与えるのだ。
 最近、たくさんの嘘で話題になった人物もいたようだが、それによって一時的な真実が生まれてしまったのだとしたら、悲しいことである。私たちはお客様を楽しませるべく、よりクオリティの高い嘘を模索し続ける。 ぶーにゃん

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