芝居の楽しみ

 まだ子供だった頃、私の家ではいつも、母と祖母の間に小さな戦争が起きていた。火種は本当に些細なことだったが、父はいつも嫁姑の間に入り、苦悩し、また、いろいろと努力していたように思う。「俺の親なのに、どうして俺の気持ちがわからないのか」と、父が祖母に放った一言が、今も耳に残っている。
 「隣人戦争」の『高見沢勝子』とその息子『明』の場、稽古を見ていて、あの頃の父や母、祖母の思い出が次々に湧き出してきた。芝居を見て、思いやイメージが広がり、心が活性化する。これも芝居の楽しみの一つだと思います。
 ところで、その『高見沢勝子』は、福浦陽子と逸見美知子のダブルキャスト。福浦は前回公演「見よ、飛行機の高く飛べるを」で、星組の『山森ちか』を、そして、逸見は一昨年の秋季公演「煙が目にしみる」で、星組の『野々村桂』をそれぞれ好演している。また、熟練の高藤香織が、『勝子』の息子『明』を演じる。高藤は、「見よ、飛行機の高く飛べるを」で花組の『青田作治』を演じた。権威には弱く、弱き者たちには高圧的な、ともすれば悪役の部分が際立ってしまう『青田作治』を、高藤は、人間的にも喜劇的にも魅力溢れる人物に演じている。
 ストーリーだけではない、芝居の楽しさを、劇場で再発見していただけたら…。そう思いながら、わたしたちは、日々、稽古を重ねております。 ぶーにゃん

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